寺子屋講演会 萬田緑平さん『最後まで精一杯生きる』

今回の瑞岩寺寺子屋講演会は、緩和ケア「いっぽ」の萬田緑平先生をもお迎えました。

先生は群馬大学医学部外科医で何年も患者と向き合ったのち、思うところがあり緩和ケアに移られました。200名以上の参加者のみなさんも食い入るように、患者、家族の写真、生の声の動画を、癌患者さんの自宅で目一杯生きる姿を画面を見つめておられました。


先生は20年数前には、患者さんには、告知はしなかったと言います。

本当のことを言ったらかわいそう。という理由で。そして、頑張れ頑張れといわれながら、最後の最後まで治療され、心臓マッサージと気管内挿管、人工呼吸のフルコースをうけながら、亡くなって行ったそうです。もちろんお別れなんかなかったそうです。人生の終末期の一番大切な時に、自分の本当の情報を医師家族に握られ、延命のために頑張らされるだけの人生の終わり方はしっくりいかなったそうです。


先生は先輩の反対を気にせず、次第に告知したそうです。

余命が短いと聞かされれば平気な訳がありません。辛いに決まっています。その患者の人生の終末期を家族と一緒に背負うようになったそうです。そして、それが次第に負担にならなくなったそうです。他の外科医仲間からすれば、そんなところに時間をかけている変な奴だったそうです。 告知の辛さを避けると、そのつけは、自分の人生を自分で終わらせることの出来ない患者本人に来ます。更に、何も出来なかった家族も苦しみとしてずっと引きずられることになります。告知して、きちんとフォローすれば、いつか自分が亡くなることを受け止められる。その時間は人によって違いますが。本人と家族が亡くなることを受け止められれば、人生を振り返ることが出来るし、想いを伝え合うことができる。感謝の気持ちを伝えることが出来、お別れもできると先生は仰います。この患者さんたちの声を伝えることが、先生が家族から託された使命だと仰っています。


「生まれてきてくれてありがとう。なら、亡くなる時もありがとう」 って言いたい。これが先生の信念だそうです。。 本当にすばらしいご講演でした。誠に有り難うございました。先生の益々のご活躍をご祈念申し上げます。  

     

<プロフィール>■萬田緑平

【講師経歴】   平成3年 群馬大学医学部卒業 平成20年3月まで 群馬大学第一外科に所属 県内外の病院外科勤務 平成20年4月から 緩和ケア診療所・いっぽ 勤務 書籍「穏やかな死に医療はいらない」 朝日新書 H25/2/13出版 800円 一般向け。 看取りというより延命治療の話しに近いです。   「家に帰ろう」徳間書店 H25/10出版 1000円


【緩和ケア診療所・いっぽ】

ペインクリニック小笠原医院を前身とし、平成3年の開設以来在宅緩和ケアに取り組んできた。 平成20年4月「緩和ケア診療所・いっぽ」として「癌患者を中心とする在宅緩和ケア」を専門に再スタート。現在、小笠原院長以下、医師2人、看護師8人、事務4人のスタッフで、常時60人程度の癌患者さんの訪問診療をしている。緩和ケア外来もあり、通院できる方を支えています。看取ることが仕事じゃない。緩和ケアが仕事じゃない。自宅で目一杯、その人らしく生きることを支援する事が仕事です。


合掌


平成二十六年八月

住職      長 谷 川 俊 道