寺子屋講演会 円覚寺管長横田南嶺老師「観音さまのこころ」

 

今回はテレビや書籍、月刊『致知』のコラム、ご講演などで有名な鎌倉の臨済宗円覚寺派管長であられる横田南嶺老師さまに『観音さまのこころ』と題してご講演いただきました。

 

横田管長さまは、宗派は異なれど瑞岩寺に講演にこられた夜回り先生こと水谷修先生や、姜尚中など多くの著名人が「平成の名僧」と仰られている方で私も是非一度瑞岩寺にお迎えしお話を伺いたいと長い間願っておりましたところ遂に実現致しました。本当に有難いご縁でございます。

 

横田管長さまは、仏とは「真実の人間性」であり、慈雲尊者の言葉をより「人となる道」であると説かれ、何故日本人の多くが観音参りをするのか?という疑問を参究されました。浅草の浅草寺には年間3000万人以上もの方がお参りされるそうです。しかも、誰も実際の本物の仏像を見たことは一度もないにもかかわらず。

 

一体何故でしょうか?

世に言われる「六観音」とは、聖観音、千手観音、馬頭観音、十一面観音、准詆観音、如意輪観音であり、各観音さまは地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人道、天道を表し導く存在であります。そして、禅宗でも最も良く読まれる観音経普門品偈の「七難(火、難、水難、風難、刀杖難、鬼難、枷鎖難、怨賊難)」を救う観音さまの功徳力というものは、実は仏教の説く人間の三毒(貪、愼、癡)のことであり、「怒りの炎、愛欲の水、人生の荒波、煩悩に身を切り刻まれる、煩悩の鬼、愛欲に心が束縛される苦しみ、煩悩が功徳を奪い去る」ことであるととても分かりやすくお説きになられました。

そして、かくなる「観音さま」とは一体誰なのか?

 

誰もが観音さまになれる道をお示しになられました。まずは、「観音さまを探し求め、そして観音さまに出会い、観音さまになる」道です。

 

人は誰しも辛く苦しいときには、他人に愚痴をこぼして人に話を聴いてもらいます。そして修行がすすむと今度はお位牌やお墓などに向かって今は亡きホトケさまに話をします。そして、最終段階では「仏さまの声を聞けるようになります」そして、多くの日本人が観音さまにお参りして、お願いしているのは実は、自分の不安や悲しみ苦しみを観音さまに聞いて欲しいから。実は浅草寺の観音さまは「施無畏」の形をされているといいます。「施無畏」とは、簡単に言うと「恐れることはないよ」「大丈夫だよ」という意味です。

 

どんな人の話でも、どんな悩みです、誰彼の差別なく、相手の立場になりきって親身に聞ける人、それこそが観音さまであります。あたなの愚痴を聞いてくれる人は、あなたにとって大切な大切な観音さまなんですね。

 

観世音(世の中の苦しみの音)に耳を傾け、ともに苦しむ「こころ」を仏教では四無量心(慈悲喜捨)といいます。「慈」とは人に楽を与えたいというこころ。「悲」とは人の苦しみを取り除いてあげたいというこころ。「喜」とは人の幸せを喜び願うこころ。「捨」とは人の幸不幸を平静な気持で見守るこころです。

 

観音さまのこころを坂村真民さんの詩や、至道無難禅師さまのお言葉、聖一国師さまのお言葉などをおりまぜて、私たちに分かりやすく楽しくお説き私自身も多くの気づきをいただきました。

 

横田管長さまの温和で優しい笑顔から、分かりやすく有難く深い言霊の数々が管長さまの修行の深さを感じ、多くの聴衆が和やかな中にも真剣にお話を聞いておられました。

 

最後に延命十句観音経をご一緒にお唱えいただき、多くの参加者も法悦の中に人生の生き方の一助になったと確信しております。本日多くの「観音さま」が誕生し、みなさん晴れやかなお顔でお堂を後にされていました。合掌

 

 

   平成28年8月24日     瑞岩寺住職 長谷川俊道

 

 横田南嶺管長さまのインタビューは瑞岩寺Podcast番組『HASEの金曜は聴きこみ寺』の【第157160回】で聞くことができます!

iTunesでお聴きになる方には、

https://itunes.apple.com/jp/podcast/komatta-shino-tingkikomi-si/id624486999?mt=2

PCで直接聴取される方には、

http://podcast5.kiqtas.jp/kikikomi/

 

<プロフィール>

横田南嶺(よこたなんれい)
昭和三十九年 和歌山県新宮市に生まれる。

昭和五十八年 筑波大学に入学。

東京都文京区白山道場龍雲院 小池心叟老師について出家得度。

昭和六十二年 筑波大学卒業、京都建仁寺僧堂、円覚寺僧堂にて修行。

平成二十二年 臨済宗円覚寺派管長に就任。

 

 

書籍

『いろはにほへと―鎌倉円覚寺 横田南嶺管長 ある日の法話よ

『祈りの延命十句観音経』(春秋社)

禅の名僧に学ぶ生き方の知恵』(致知出版社)

公式サイトは、 http://www.engakuji.or.jp