瑞岩寺寺子屋講演会 島田裕巳氏『葬式は要らない!?』

今回のご講演者は宗教学者で作家の島田裕巳さん!

 

「葬式は要らない!?世界一お金がかかる日本の葬式の裏側」と題して、誰もが直面する葬式、戒名、墓に関するお話を、自身の経験をもとにお話しいただきました。

 

あまりの過激なタイトルですが、「◯◯のような葬式なら要らない」ということだ。

 

島田さんは1991年に出版した『戒名-なぜ死後に名前を変えるのか』という書籍がきっかけで、葬式、戒名、墓についての本を書くようになったと仰る。

後にお坊さんと対談する機会があり、その中で葬式は贅沢なものだという話になった。人間以外の動物は葬式をしない。ましてや遺体の処理もしない。そこから『葬式は贅沢である』という題の書籍の出版を考えていたが、出版社の方から題を変えようと言われた。そして出版されたのが2010年に幻冬舎から出版された『葬式は要らない』という書籍である。本の帯には「日本の葬式が一番高い」と書いてそれを売りにした。実際に、バブル時代には院号のいわゆる戒名料(御布施)が200万円という事例があった。この時代に葬式費用、戒名料は上がったと仰る。一度上がったものはなかなか下がらない。この頃に他界した石原裕次郎と美空ひばりの葬儀はすさまじいものであったと島田さんは回想する。青山葬儀場で行われたのだが、バンドの生演奏、そして全国に衛星中継もされた。石原裕次郎の戒名は500万円だったという。この本を出版した反響は激しく、葬儀業界・仏教界から相当批判を受けたらしい。

 

昔は、葬式は村の行事で、お手伝いをしたり参列をしたりして、葬式に関わる場面が多かった。島田さんも祖父が亡くなった頃は自宅で葬儀をされた。自宅に花輪を飾り、周囲の人も手伝ってくれたり参列してくれたりしていた。最近は葬祭会館、セレモニーホールが増え、関りがなくなりどう葬式を出していいかわからない遺族が多い。業者の言いなりになって葬儀をしていると言ってもよい。その中で直葬や家族葬という言葉が出てきたのは2010年頃のことである。

 

他にも、火葬と土葬の歴史、西日本と東日本での遺骨の扱い方の違い、仏教のお寺の始まりについてなど興味深い話をしていただいた。

都市部ではロッカー形式の納骨堂、永代供養墓が全盛時代を迎えている。一方、地方のお寺では無縁墓の増加、墓の後継者不足が問題となっている。一人で複数の墓を管理する人も出てきている。また、葬儀では家族葬全盛時代を迎え、人がいつ亡くなったのかもわからない時代にある。しかし、そのような時代の中にあっても墓参りが家族の絆をつないでいると島田さんは断言する。

 

日本人が崇拝してきた先祖信仰も、核家族化や家族関係の希薄化の中で薄らいできてしまった。身近な家族が亡くなったとき、私たちははどのように故人を送り出してあげられるだろうか。また、人生100年時代になって地域の人や友人に弔ってもらうことをどれほどの人が望むのだろうか。今回の島田さんの講演はそのような人々に一石を投じてくれた。

 

死ぬこととはどのようにして人生を生きるかと直結している。葬式、戒名、墓に関して、故人の望む形と遺族の望む形のすり合わせを生前からしておくことも大切。そして別れのときには、心からの「ありがとう」を言いたいそんな人生でありたいと誰もが願うはずだ。すばらしいご講演をありがとうございました。合掌 感謝。