お彼岸について教えて下さい

◆お彼岸とは、どんな日ですか?

秋のお彼岸は、秋分の日をはさんだ前後7日間、春のお彼岸は春分の日をはさんだ前後7日間。この期間がお彼岸です。ではお彼岸とはどんな日で何をする日でしょうか。

「お彼岸とは墓参りをする日である。」と答えるかもしれません。 確かにそうですが、それだけではありません。彼岸とは、彼の岸、つまり向こう側の岸のことです。 向こう側の岸とは、迷いや苦しみのない浄らかな浄土の世界、悟りの世界です。


彼岸という原語は、梵語(昔のインドの言葉)のパーラミーターで波羅蜜多と訳されています。 意味は「到彼岸」、すなわち「悟りの世界へ到る」です。

また、彼岸は日本独特の仏教行事で、古来より日本人は、彼岸の期間を仏教週間として先祖に感謝し供養することをならわしとしてきたのです。


人はなぜ先祖供養するのですか?

大規模な先祖供養といえば、盆と彼岸。盆は一年に一度、先祖か帰ってくると考えれられています。「盆と正月」という言葉があるくらいですから、 昔の日本人にとって、この日は楽しい季節だったことが想像できます。


彼岸は先祖が帰ってくるというより、先祖の霊が眠る墓地に出向き、花や供物をたむけ、読経などによって供養するのです。

通常私たちが行っている先祖供養の儀式は、故人の冥福を祈ることと、子孫を守ってくれることに対する感謝の心などにまとめられます。

日本人は先祖の霊によって守られて、はじめて幸せな生活ができると信じてきました。


御先祖様に感謝しなければならないのは?

先祖供養という儀式を、とにかく軽く見がちな人も世間にはいるようです。

しかし、その人たちといえども先祖なくして、現在の自分は存在しうるはずはないのです。

だれにでも先祖はおり、先祖の数はさかのぼって数えると、無数ともいえる数になります。これらの無数の先祖の血は、たとえ、どれほど薄くなろうと、 その人の血に流れているのです。

この厳粛な事実に気付くならば、先祖に対する感謝の気持ちは、ごく自然にわき、敬う気持ちが生まれてきて当然だと思います。


「御先祖様」は最高の「おかげさま」

「おかげさま」という言葉があります。相手の親切に対する感謝の意味としてごく自然に使われている言葉です。

この「おかげさま」という言葉によって表される感謝の心を、 日本人は古来よる持ち続けてきました。人は、自分に対してなされた様々な善意に対して感謝の心を抱きます。


その中でも、自分という人間が、 この世に生まれたおおもとである父母、祖父母に対する感謝の念は最も大きいのです。「御先祖様」こそ最高の「おかげさま」なのです。こうしたことから見ましても、 日本人の日々の生活は先祖供養と強く結びついていることがわかります。


六波羅蜜と先祖供養

お彼岸は、自ら六波羅蜜の・布施(施しをせよ)、・持戒(戒めを守る)、・忍辱(苦しみに耐える)、・精進(努力せよ)、・禅定(落ち着いて集中せよ)、 ・智慧(正しい判断をせよ)の実践をして悟りの世界に一歩でも近づくための仏教週間です。というよりも先祖供養を行うということは六波羅蜜の実行ともいえるからです。 たとえば、お彼岸のお墓参り、これなどは六波羅蜜のうちの「精進」に通じるといえないでしょうか。


お塔婆供養

法事などに、故人の霊を供養するために近親者の中で志のある人々は、法事の前に自分の名前を書いた塔婆をたてて回向してもらうわけです。 こうして供養するのも、塔婆にお経、戒名、の文句を書いて拝めば、その功徳と御利益は皆故人の霊の上に注がれるといわれております。


孝順にして父母に供養すべし

先祖供養の心とは、お釈迦様の説かれた教えを忠実に守り、毎日の生活の中で実行することに他なりません。経典には次のように説かれています。


「父母を救済するは大功徳あり。われ父母をたすくるによりて、世々に難なく、自ら成仏を致せり。この義をもってのゆえにもろもろの比丘等よ、各孝順にして父母に供養すべし」と。

ところで仏教では、供養を三種に分けています。


第一の供養が、行供養で、お経をあげたり、熱心におつとめをすることです。

第二の供養が、利供養で、縁者に集まってもらい、故人のためにおもてなしをすることです。

第三の供養は、敬供養で、寺院に仏具や法衣などを送るのがこれにあたります。一般に寄進と呼ばれ、これは石碑や梵鐘など大きなものも、この中に入ります。